これは、僕が年末年始に急いで準備して作った発表資料です。
参考文献は一点だけで、僕は古典ギリシア語初心者です。
発表した時に指摘されたことですが、YouTube 動画の音声の転写パートが間違いだらけなのだそうです。
古典ギリシア語では、補助記号が大事なのだそうです。僕の作った資料では、それがほとんど抜けてしまっています。
例えば、[oion] になるはずの部分が [hoion] っぽく聞こえると僕は指摘しています。
しかし、本来は有気を表す補助記号がついていて、[ho] という発音で正しいらしいです。
そういう諸々の間違いをしてしまいましたが、この発表をしてよかったですね。
音声学の授業では、言語を一つ選んで、その音声を発音記号を使って分析するという課題が出されます。
トピックができるだけ他の人と被らないようにという条件もあります。
確かに、皆が中国語の子音ばかりを発表のトピックに選んだ場合、かなり悲惨なことになりそうです。
言語のストックがあまりなかった僕は、「他人と被らないように」考えた結果、古典ギリシア語を選びました。
案の定誰とも被りませんでした。もっと言えば、古典語を選んだのは20人以上いる履修者の中で僕だけでした。
古典ギリシア語を題材として選んだ理由は他にもあります。
以前からギリシア・アルファベット(ギリシア文字)を読めるようになりたかったのです。
古典ギリシア語は全て上のギリシア文字で書かれています。ゆえに、これが読めなければ、古典ギリシア語を学び始めることすらできません。
そして、僕が言うまでもなく、古典ギリシア語は印欧祖語比較言語学の中で重要な位置を占めます。
印欧祖語が分からない人は、以下の動画を参考にしてみてください。
印欧祖語について勉強したかった僕は、古典ギリシア語の文字といいう壁で躓いていたのです。
また、印欧祖語を度外視してもギリシア文字が読めることのメリットはあります。
例えば、英単語の語源を調べる時です。Oxford English Dictionary (OED) 等、きちんとした辞書で英単語の語源を調べると、ギリシア語由来の英単語の場合は、元のギリシア語が載っています。
例えば、paralell 「パラレル」という英単語は誰でも聞いたことはあるでしょう。
OEDによれば、この単語は古典ギリシア語由来です(厳密には「古典ギリシア語⇒ラテン語⇒中期フランス語、という経路で英語に入ってきた。)
OED の記述では、< ancient Greek παράλληλος とあります(OED)。
ギリシア文字が読めないとここで詰みますね。
παράλληλος の読み方は、[parallεːlos] になると、今の僕なら何も参照しなくても分かります。
このように、英単語の語源をやっていても、ギリシア文字が付きまとうのです。そして、以前の自分はこれが読めませんでした。
いつか読めるようにしなきゃいけないと思っていましたが、その「いつか」は、ずっと来ませんでした。
そこで、僕は音声学の発表のトピックを古典ギリシア語にすることで、無理やり自分にギリシア文字の習得を課したのです。
年末~年始に他のレポートを抱えながらこの仕事をこなし、割としんどかった覚えはありますが、結果的に古典ギリシア語の文字が読めるようになって良かったです。
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