1か月に100万語多読を続けた結果。TOEICのスコア下がる。

1)多読を始めたころ

大学3年の終わり(2016年1月ごろ)に英検1級を取って、それから半年以上スランプに陥ってしまった。

長文が全然読めないのだ。確かに月刊の英語学習雑誌『CNN ENGLISH EXPRESS 』(朝日出版)でリスニングを鍛えてはいたが、そもそもの読解力が足りていなっかったため、スクリプトを読んで理解するのが難しかった。

当然TOEICでも結果が振るわず、850点くらいをさまよっていた。長文を制限時間内に読み終えることができないのだ。

そこで、2016年の10月くらいから多読を始めた。京都大学総合人間学部図書館(現在の吉田南図書館)には、Oxford Bookworm seriesや、Macmillan Reader series等、レベル付きの多読教材が豊富に揃えられており、自分はそれらを利用した。

まずはMacmillan Readerから入った。このシリーズは他社の物より多少は簡単な英語で書かれており、比較的敷居が低く、多読を始めた自分にとって相性が良かった。

そうして多読を続けるうちにどんどん英語力が伸び、2017年1月の試験で初の900点越えである910点を取ることができた。リスニング460点、リーディング450点だったと思う。もうスコア表を捨ててしまっているので確かめようがないが。

そのまま多読を継続しながら『CNN ENGLISH EXPRESS』(朝日出版)を聞いていると、半年後(2017年7月)には915点を取ることができた。以下の写真1と写真2を参照

写真1、TOEIC 2017年7月実施
写真2、TOEIC 2017年7月実施 正答率詳細

写真2から分かる通り、この時は長文でかなり間違えてしまっている。要するに長文が読めていないのだ。詳しくは分からないが、「文章の中の情報をもとに推測できる」という個所はたぶん長文だろう。そこの正答率が60%くらいしかない。TOEIC900点の力なんて所詮この程度。長文を読んでも半分くらいしか分かっていないのだ。

そしてそのままレベル付き洋書で多読をしていると、さらに半年後(2017年12月)には935点を記録した。以下の写真3と4を参照。

写真3、TOEIC 2017年12月実施
図4、TOEIC 2017年12月実施 正答率詳細

リスニングが落ちてきて、代わりにリーディングが上ってきている。正答率は図4の通りである。リーディングセクションが概して良くできている。多読を始めて1年くらいたっていたので、この時期は、長文を制限時間以内に読み終わるのが当たり前だった。ただし、根拠を持って答えられない長文問題がいくつかあった。

2)本格的な洋書が読めるようになったが・・・

2018年、内定ゼロで京都大学を卒業する。そうして、「自宅に引きこもってひたすら洋書を読みまくるニート」という構図が出来上がってしまうのだった。

この時期になると、レベルがついていない本物の洋書(要するに、英語学習者向けに簡単に書き換えられたわけではない洋書)にチャレンジできるようになっていた。

Harry Potter シリーズは全部読んだ。Daren Shanというシリーズも読破した。Eragonシリーズを読み切ったあたりからかなり読解力が上った。

そうして受けた約2年ぶりのTOEIC test(2019年12月実施)。相変わらず公式問題集はやらなかった。結果は以下の図5、6を参照。

図5 TOEIC 2019年12月実施
図6 TOEIC 2019年12月実施 正答率

力は上がっているはずなのに、スコアが落ちている。

リスニングの勉強はほとんどしていなかったので、スコアが落ちるのも当然であろう。しかし、あれだけ洋書を読んだのにリーディングまで落ちてしまっている。

ただ、よくよく正答率を見てみると、長文問題の正答率は以前より上がっている。確かに、今回はほとんど全ての長文問題に根拠を持って答えることができていた。もちろん時間内に全ての問題を処理できていた。ただし、語彙問題で何問か落としてしまった。これは実力なのでしょうがない。洋書を読んでいて見ない語彙はやっぱり苦手である。さらに、自分は小説しか読んでいなかったので、日頃使う語彙が偏っていたのだろう。

さて、2019年くらいから1か月に100万語は多読できるようになっていたがTOEICのスコアが落ちたことを紹介した。しかし、自分はこれにとどまらない。

3)英語で専門書が読めるようになったが・・・

2020年に半年だけ「やばい学校」で働いて、逃げて帰って来たわけだが、自分の専門分野がないことに劣等感を抱いていた。

「自分の専門分野は○○です」と言え、その分野の洋書をちゃんと読める人たちと出会ったことは、自分の中でプラスに働いている。

よって、自分の専門分野を持ちたいという思いが生まれたし、その分野の洋書を自由自在に読みこなしたかった。

以前から、英語の不規則な部分に強い関心があった。そして、そのような「英語のイレギュラーな部分」が、実は英語の歴史をたどっていくことできちんと説明できるということを知っていた。

しかし、英語の歴史を調べるためには、英語で書かれた文献を読まねばならず、自分にはそんな高度なことはできないことも分かっていた。

例えば、英語の歴史を調べるうえで避けて通れないのが、Cambridge History of the English Language 1-6vols である。全6巻であり、当時の自分としては途方もない難易度であった。

Cambridge History of the English Language vol2

このレベルの書籍は、当時の自分にとって、Harry Potter 等の子供向けの洋書とは、桁違いの難易度であった。

でも、読んだ。

英語で書かれた専門書を読んで読んで読みまくった。

正確には、この本から入ったわけではなく、introduction(入門)と書いてあるテキストから読み始めた。

読んだ先に何もないことも分かっていた。僕が勤めた私立高校には、英語の達人みたいな人が2-3人いたが、皆大変なことになっていた。一人はスケープゴート(理事長主導によるいじめ・組織内である一人をターゲットにいじめを行うことで、組織の結束を得ようとするもの)のターゲットにされていて、さらにその人がアメリカの大学か大学院の学位を持っているすごい人で。そんなことのターゲットになるなら辞めたらいいと思うかもしれないが、少子化で私立学校は業界全体がしんどくなっており、転職すると非正規のポストしかない状況なのである。

さらに、模試でずっと英語が1位だったという先生もいた。その人は、自分から見ると不可思議なほど英語が良くできた。だが、そんな人も次のスケープゴートにならないかと日々本当にしんどそうにしていた。

一方、口だけうまくて本人は何もやらないタイプの先生は、本当に楽にやっていた。「人間はこんなに楽をして生きていけるのか」と僕に思わせたほどである。

じゃあ、「お前もそういう口のうまい人間になれよ」と言われそうだが、僕はどうやらそっちタイプの人間(平気でうそをつくタイプの人間)にはなれないようだ。多分これは遺伝子のレベルでそうなっているのだと思う。

だからこそ自分は、実力のある側を目指した。このタイプが後々しんどくなることは嫌と言うほど見てしまったが、自分は平気でうそをつく人間にはなれなかった。

そこで、英語で書かれた英語史の専門書の内、タイトルにintroductionと書かれたものをあらかた読んだ。そうするうちに、文法を分析するのに生成文法の知識が不可欠だと悟り始めた。

学部生のころは、樹形図ばっかりの生成文法は難しそうに見え、それにやる意味も分からなかったから避けてしまっていた。しかし、英文法を割と厳密に分析するためには生成文法の知識が必要不可欠だと分かってからは、これに正面から向き合った。

Andrew Radfordという人が書いた生成文法の教科書が分かりやすいという情報を得ると、すぐに買ってきて読みふけった。確かに名著だった。

Andrew Radford (1988) Transformation Grammar

数あるAndrew Radford の著作でも、上のTransformation Grammar は特に名著だったと思う。これのおかげで生成文法の基礎が分かった。

そうやってRadfordの著作を読んでいるうちに、ほとんど彼の著作を読み切ってしまった。

そこで、以前から読もうと思っていたHuddleston and Pullum (2002) Cambridge Grammar of the English Language を通読することに決めた。

Huddleston and Pullum (2002) Cambridge Grammar of the English Language

この本は現在英文法において一番信頼できる本である。確かに、20年くらい前に書かれた本なので、古くなっているところはあるが、それでも、英文法についての疑問が生じたときにまず参照すべき本であろう。ただし、下の写真から分かる通り、相当分厚い。

それもそのはず、否定等、英文法の特定の分野だけでなく、全分野解説しようとするとこれくらいの分量にはなる。本編だけで1760ページを超える。それに、英語のレベルもその辺のtextbookレベルを遥かに超える難易度だ。

自分はこれを通読した。最初のページから最後のページまで全部読んだ。

実は、大学院に行きたかった。大学院に進んで、そこから交換留学をしたかった。

だが、自分は言語学を専門的に学んだことがなかった。なので、自習していたわけであるが、生成文法にばかり偏っている感があり、大学院の入試問題の過去問をざっと見たところ、全分野出題されるので、これじゃ受からないだろうと。

そこで、せめて英文法だけでも全分野やって入試に臨もうと思い、これに挑んだ。6月くらいから読み始め、8月頭の試験当日には50ページくらい間に合わなかったが、試験2日目が終わった後の午後に残されたページを読み切った。

そして翌日、合格発表に自分の受験番号があった。言語学自習して大学院に受かった。

これだけでネタとして使えそうだが、自分はその先も、Chomsky のThe Minimalist Proglamを読んだりと、現在(2021年12月)はChomskyの著作全読破に挑戦中である。

(the Minimalist Program 10月に読破)

そして久々に受けたTOEICでは、半泣きになった。2021年10月3日実施の回だったが、とにかくリスニングが聞き取れない。何を言っているか分からなかった。ただ、当時はThe Minimalist Programを読んでいる最中だったので、試験会場にも持って行っており、休憩時間にこれを読んでいた。そして気になるTOEICmの結果は、以下の写真を参照。

TOEIC 2021年 10月3日実施
TOEIC 2021年 10月3日実施 正答率

スコアが落ちている。数年ぶりに900点台を割り込むという失態。リスニングがもうボロボロ。ごみのような結果。

ただし、リーディングは語彙問題しか落としていない。長文がとにかく簡単だった。全ての問題に根拠を持って答えることができたし、なんなら時間が余った。

ここでTOEICあるあるを述べて終わりたい。

試験会場でChomskyのThe Minimalist Programを読んでいるやつがいたら、そいつは長文余裕の満点。

そんな奴めったにいないが。

作成者: hiroaki

高校3年の時、模試で英語の成績が全国平均を下回っていた。そのせいか、英語の先生に「寺岡君、英語頑張っている感じなのに(笑)」と言われたこともある。 しかし、なんやかんや多読を6000万語くらい積んだら、ほとんどどんな英語文献にも対処できるようになった。(努力ってすごい) ゆえに、英語文献が読めないという人は全員努力不足ということなので、そういう人たちには、とことん冷たい。(努力を怠ると、それが正直に結果に出る) 今は、Fate Grand Order にはまってしまっていて、FGO 関連の記事が多い。