Australian National University というところがやっている Open Research Library というサイトをご存じでしょうか。
今日、ネットサーフィンをしていて驚いたのが、前からどうしても欲しかった Forms and functions in Kombai, an Awyu language of Irian Jaya という本がそこで無料で公開されていたのです。
以下のリンクからアクセス可能なはずです。
https://openresearch-repository.anu.edu.au/handle/1885/145791
この本はパプア・ニューギニアの少数派言語 Kombai 語について記述した本で、amazon Japan に ISBN で検索にかけてもヒットしないような稀覯書(rare books のこと)です。
僕は今、関係代名詞の研究をしていて、Cinque (2020) で珍しい形の関係代名詞節構造を持つ言語として Kombai 語の例が紹介されていました。そしてさらに、その例文は先ほど紹介した本から採取された物です。
研究の世界ではできるだけ孫引きを避けることが鉄則になっています。
普通の引用の仕方は、Cinque (2020: 59) “~” のように、著者、出版年、そしてページに言及して引用します。
一方、孫引きというのは、Cinque (2020: 59) が、De Vries のForms and Functions in Kombai, an Awyu Language of Irian Jaya の89 ページから引用した以下の例によると・・・
みたいなやり方を指します。
こうした引用の仕方に研究不正の要素は特にありません。そもそも、De Vries の原典に当たっていないことを白状しているため、研究倫理的にはまともな方だとも言えます。
しかし、こうした引用の仕方はかっこ悪いですし、さらに、研究の信頼度を大きく下げます。
というのも、「A さんはこう言っていたので」ではなく「Aさん曰くB さんはこう言っていたので」になってしまうため、B さんの本当の意思が分からないケースが多いのです。
僕自身生成文法をやり始めて、昔は Anderw Radford の教科書に依存していました。 Radford 曰く Ross が島という概念を発表して、それによると・・・。みたいなやり方をしていました。
学生レベルならこういったことは普通に起こってきますが、研究レベルになってくると孫引きを以下に減らすかの勝負です。
しかし、時間にも体力にも限界はありますし、そもそも入手困難な本というケースもあります。
そういった場合に、こうした Open Library 等は役に立ちます。