英語多読おすすめ本まとめ【多読6000万語した僕の実体験から解説する】

「英語多読を始めたいけれど、何から読み始めたらいいか分からない」

「多読初心者だけど、どれくらいのレベルの物から読み始めたらいいのか分からない」

こういった疑問に答えます。

この記事を書いている僕は、多読歴6000万語ほど。現在は言語学でも一番難しいとされている Noam Chomsky の著作を原書で読みこなせるようになってきました。しかし、過去には多読で数えきれないほどの失敗と絶望を味わってきました。

この記事の内容

・多読初心者が知っておくべきこと

・多読中級者が知っていると便利な本

・多読上級者になるために必要なこと

1 多読初心者が知っておくべきこと

僕自身、多読を始めた時、『シャーロックホームズ』や『ハリーポッター』等の本格的な洋書にいきなり挑んで爆死しました。

結論から言えば、多読初心者にこうした本格的な洋書を読むことは不可能です。必ず失敗します。

本格的な洋書を読むためには、英検1級を遥かに上回る語彙力が土台として必要です。

さらに、英語をかなり読みなれていないといけません。

これらの要素が、本格的な洋書を読む際の「強靭な足腰」として機能します。

それなしで本格的な洋書を読み進めようとすると、僕みたいにメンタルがやられて終了します。

では、どうすればいいのか。

結論:レベル付きの洋書を読んでみてください

世の中には、レベル付きの洋書というものが豊富に出版されています。

こうしたシリーズは使用する語彙、表現、さらには文法のレベルを制限して書かれており、多読初級者におすすめです。

リトールド版 (retold) と呼ばれる、昔の名作を簡単な英語で書き改めた物が多く出版されています。その他、オリジナルの話や、ノンフィクションを出している出版社もあります。

現に僕も、こうしたレベル付き洋書を300冊くらい読んだことで、本格的な洋書を読めるようになりました。

多くの出版社がこの手のシリーズを出しており、メジャーなものは全て読んだ僕が、各社のいい点、悪い点をまとめてみました。

(注意)全てを買うと高いので、学生なら、学校の図書館にある物を利用したり、なるだけ無料で利用できるものを利用しましょう。社会人は…、気になる物だけ買ってみてください。

①ラダーシリーズ(IBC パブリッシング)

リトールド版に関してはこの出版社が一番いいのではないのかと思います。

話の筋は原作に忠実な方で、それでいて難しすぎません。

例えば、ラダーシリーズが出す『シャーロック・ホームズ』シリーズは原作の面白さをかなり保ったまま、平易な英語に書き改められています。

中でも、以下の2作品は大変面白く、僕自身それぞれ6周くらい読んだ記憶があります。

シャーロック・ホームズ 緋色の研究 A Study in Scarlet (ラダーシリーズ Level 3) 』

シャーロック・ホームズ/バスカヴィル家の犬 The Hound of the Baskervilles (ラダーシリーズ Level 3) 

そのほか、『ドラキュラ Dracula (ラダーシリーズ Level 4)』なども原作の面白さをかなり保っていて、素晴らしかったです。

他の出版社からもこうした作品のリトールド版が出ていますが、原作の面白さが大幅に失われています。正直、お金を払って買う価値があるのか疑問なものもあります。

それと対照的に、ラダーシリーズが出すリトールド版は、話の筋や面白さの面で、原作に限りなく近く、読んでいてかなり楽しめるのではないでしょうか。

ラダーシリーズの残念な点は、ノンフィクション系です。

ラダーシリーズでは、リトールド版のほかに、ビル・ゲイツや、アインシュタイン等の偉人の伝記をシリーズ化して出しています。しかし、実際にほとんど全てを読んだ僕からすれば、かなり物足りない感が否めません。

内容が物足りないし、かといって、英語がそこまで読みやすいかと言えばそうでもない。果たして、お金を払って買う価値があるのか、疑問です。

② Oxford Bookworms Library (Oxford University Press)

Oxford から出ているこのシリーズは、英語多読界の鉄板です。

Oxford bookworm library の良い点は、シリーズの豊富さです。リトールド版はもちろんのこと、原作が映画の物(もしくは、映画版が有名な作品)や、ノンフィクションまで、幅広くカバーしています。

レベルは1-6まであり、1が易しく6が難しいです。

全般的に、リトールド版では数字が大きくなればなるほど、中身も充実してきます。

逆に、レベルが1に近ずくほど、ペラペラで中身がスカスカになりがちです。

ラダーシリーズなら、レベル1や2でもある程度内容が伴っています。しかし、Oxford の場合は、本当にスカスカでペラペラのケースが散見されます。買うならよく考えて買いましょう。

また、Oxford から出ているリトールド版が玉石混交になってしまう理由は、Oxford はレベル別に総単語数まで合わせようとしているからです。

たとえば、Oxford から出ているレベル5の本は、総単語数が大体2万~2万3000くらいです。

一方、レベル4なら総単語数は1万8000くらいに揃えてあります。ほとんどの作品で。

本来は、たとえリトールド版であっても、その作品の話の筋を伝えるための必要最低限の語数は、作品ごとに大幅に異なるはずです。

だからこそ、ラダーシリーズは同じレベルであっても、作品ごとに総単語数(ページ数)が全く違うのです。

しかし、Oxford は「レベル4なら総単語数18000語くらい」「レベル5なら総単語数22000語くらい」というスタイルを取っています。

ゆえに同じレベルの本なら、『シャーロックホームズ』でも『改定2万里』でもページ数はほぼ同じです。

なので、レベル1~3くらいは、リトールド版の場合は物足りないと感じるものが出てきます。

もちろん例外的に素晴らしいものもありますが、これがOxford の出版社としての全般的な傾向です。

総単語数が18000語くらいあると、ある程度の話を伝えられるためか、Oxford から出ているリトールド版は、レベル4くらいから質が安定してきます。

Oxford から出ているリトールド版で僕がおすすめできるのは、Charles Dickens の作品がまず挙げられます。

David Copperfield Level 5 Oxford Bookworms Library (English Edition) 

実は僕は原作を読んだことがないのですが、Oxford から出ている Dickens のリトールド版はどれも内容がしっかりしていて、英語も読みやすいです。

その他、Oxford Bookworms Library 5 Wuthering Heights もかなり面白かった記憶があります。

Oxford 独自の取り組みもあります。ホラー系の短編をまとめて、一冊の短編集として出していたりしす。

僕のような怖い話が好きな学習者にぴったりです。

各レベルごとに一冊ずつこういうホラー系短編集が出ており、全般的な傾向としてどれも良質で、面白かったです。

個人的には、

Oxford Bookworms Library: Stage 5: Ghost Stories

Oxford Bookworms Library 6 Fly & Other Horror Stories

が気に入っています。

Oxford Bookworm Library が優れている点は、ノンフィクションが充実しているところです。

Oxford はこうしたノンフィクション系を Factfiles という名のサブシリーズで展開しています。Oxford bookworm library の真に評価できる点はこうしたノンフィクション作品の質の高さにあります。

他の出版社もノンフィクション系に手を出そうとしていますが、実際にほぼ全てを読んだ僕が判断するに、Oxford には質の面で遠く及びません。

現在、ノンフィクション系は Oxford の一人勝ちの状態になっています。やはり雇って来れるライターさんの質が違うのでしょうか。

Oxford から出ている数あるノンフィクション系で僕がとりわけ面白いと思ったものが、

Marco Polo and the Silk Road (Oxford Bookworms Library Factfiles, Stage 2)

Space (Oxford Bookworms Library. Factfiles, Stage 3)

The History of the English Language (Oxford Bookworms Library: Factfiles, Stage 4)

等です。

その他にも面白いものは沢山ありましたが、割愛します。

③Penguin Readers (Penguin Books)

ラダーシリーズ、Oxford bookworm library と合わせて、多読3強に数えられるシリーズです。

Penguin Readers の特徴として、まず、種類が無茶苦茶多いです。おそらく、多読系で一番多いです。

Penguin Readers の良い点は、レベル1~3くらいの物でも、内容的に充分面白く、質が高いものがかなりある点です。例えば、

Penguin Readers: Level 3 THE CANTERBURY TALES

は、英語が易しく読みやすい上に、話の内容が面白く、読みだしたら止まりませんでした。

Penguin Readers は、良くも悪くも原作に忠実です。話の流れをできるだけ原作に近づけようとしているのです。由緒正しき出版社だからこそ、こういうことが起こってくるのかもしれません。

これがプラスに働くことも多いです。例えば、

Penguin Readers: Level 4 THREE ADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES 

等、Penguin readers が出す『シャーロックホームズ』短編集は原作に忠実な方で、かなり面白いです。

しかし、原作に似せようとして、難易度がもはや英語多読用の教材のそれではなくなってしまっているケースも散見されます。

Penguin Readers のレベル5~6にはそういうものが多かった印象があります。

④ Macmillan Readers (Macmillan)

Macmillan readers は多読3強に比べ、シリーズのラインナップがやや貧弱です。

しかし、一番おすすめです。

Macmillan Readers は、そのラインナップのほとんどがリトールド版で構成されています。

そして、このリトールド版が本当に秀逸です。

秀逸ポイントは、英語が平易で読みやす点。そして、内容的にも充実している点が挙げられます。

これは、実際に読んでみるとはっきり分かると思います。

レベル4以上は全体的に話の内容も充実しており、おすすめな作品が多いです。中でも、

Macmillan Readers Goldfinger Intermediate Reader

等の 007 シリーズが僕のお気に入りです。

単発の作品だと、

Macmillan Readers Jurassic Park Intermediate Reader 

が相当面白かった記憶があります。残念ながら今は絶版ですが。

まとめ:多読初級者へのメッセージ

多読初級者は、背伸びして本格的な洋書に挑むよりも、レベル付きの洋書で多読の足腰を鍛えたほうが賢明です。

各出版社が出す最高レベル(Penguin と Oxford ならレベル6)が読めるようになると、本物の洋書はもうすぐそこです。

2 多読中級者が知っておくべき本

僕の場合、既に述べた通り、レベル付きの洋書を300冊くらい読んだところで、『ハリーポッター』等の簡単な洋書が読めるようになってきました。

このレベルに達した人を多読中級者としましょう。

このレベルの人におすすめできる本はいくつもあります。

しかし、ここはぐっとこらえて、個別の作品ではなく、少し別の物をおすすめしたいと思います。

このレベルの人の共通の悩みは、「次に何を読むのか」だと思います。

もうレベル付きの洋書が有用な時期は過ぎました。

今までなら、「Penguin のレベル4 だったらこのくらいの難易度だから、これを読もう」という本の選び方で通用したはずです。

しかし、多読中級者は、レベルのついていない本を主に読んでいるはずです。

こうした本は、買う前からその難易度を測ることは難しいはずです。

さらに、僕のように「多読初級者⇒中級者」に上がってきた人には、海外の作家はなじみがない存在です。

誰の作品が比較的平易な英語で書かれているのか、誰の作品が自分に合っているのか… こうしたことが分からないケースが多いはずです。

今の僕のように、「事実上どんな難易度の洋書にも対応できるし、そもそも多読教材を選ぶ目利きが完成している」わけでもないはずなので、多読中級者はそれ相応の苦しさを抱えているはずです。

僕くらいのレベルにまで実力を上げるためには、そこからさらに4000万語くらい多読をする必要あります。

よって、僕が数冊平易で面白い洋書を紹介したところで、根本的な解決にはなりません。

この問題を解決するための手段はいくつかありますが、僕自身が実際に活用したものを紹介しましょう。

多読中級者へのアドバイス:『多読ガイド』の類を使ってみてください

僕もかつて一冊持っており、本選びににおいて相当役に立った記憶があります。

英語多読完全ブックガイド[改訂第4版] 』

『多読ガイド』というのは、洋書とその難易度、そしておすすめ度合いや、一行程度のあらすじ等が書いてある本のことです。

類書は色々ありますが、『英語多読完全ブックガイド[改訂第4版]』は、数ある類書の中で、群を抜いて多くの本を扱っています。

多読中級者に多読のやり方や、重要性を説くセクションは不要です。とにかく、紹介している本の種類の多さが判断基準です。

なので、英語多読中級者に勧めるものとしては。これ一択です。

僕は、この本でおすすめ度が高い本を優先的に買って読んでいました。もちろんいくつか「失敗だな」と思う買い物をしたことはありますが、全般的には満足できる本選びができました。

ゆえに、多読中級者はこの本を参考にしながら、2000~3000万語くらい多読すればいいと思います。

3 多読上級者になるために

僕自身、真の意味で多読上級者になれたのか、実のところは分かりません。

僕は既に述べた通り、英語多読を6000万語くらいしました。その結果、自分の専門分野である生成文法で一番難しい書き手である、Noam Chomsky が書いたものを、それほど苦労せずに読みこなせるようになりました。

しかし、まだまだ能力値が足りていない感があるのも否めません。

それほど速く読めないし、それほど深くも読めません。

京大の大学院には、ヨーロッパ系の留学生や、アジア系で、「Cambridge にも受かってたけど、京大の方が安いからこっちに来た」という学生もいます。

彼らと真っ向勝負をして、「あ、負けてる」と感じたことは多いですね。

しかし、そこまでいかないと上級者と言えないのかと言えば、そうでもないと思います。

なので、ここで多読上級者の定義を定めておきたいと思います。

多読上級者の定義:自分の専門分野の本を読むとき困らない

このくらいにしておかないと、英語の勉強だけで人生の全てを使ってしまいそうです。

僕の場合は生成文法、ならびに言語学が専門なので、その分野の本を読んで困らない程度にまで実力を上げれば良いのです。

恥ずかしながら、僕はまだこの分野で読むのに手間取る書籍が若干あります。なので、真の意味で多読上級者なのか、微妙なところです。

ただし、ここまで来るのにすごく役に立ったことがあります。それをアドバイスとして伝えておきたいのです。

多読上級者を目指す人へ:自分の専門分野を持ってください。

小説だけでここまで来るのは、おそらく不可能だったと思います。

「この分野のことは大体分かる」という、自分の専門分野を持ったことにより、「専門用語や、そこでの世界観(=解説の仕方)も分かって、本が読みやすくなったばかりでなく、本選びも飛躍的に楽になりました。

生成文法でこの年代なら、こういう用語をこういう風に使って解説する、ということが分かっているから、どんどん新しい本にも論文にもチャレンジできました。

小説なら、登場人物の名前、相関関係、世界観、etc. を覚えないといけません。

僕は生成文法という自分の専門分野を持っているので、どんな著者でもこの分野で何かを書く時には、ほぼ共通した用語を使い、ほぼ同じ手順を踏みます。

読み手にとっては、かなり楽ですね。

こういう分野があったからこそ僕はここまでこれたと思っています。

まあ、自分だったら、たとえそうじゃなくても何とかしたと思いますが…

何はともあれ、何か自分の専門分野を持っていたら強いです。

作成者: hiroaki

高校3年の時、模試で英語の成績が全国平均を下回っていた。そのせいか、英語の先生に「寺岡君、英語頑張っている感じなのに(笑)」と言われたこともある。 しかし、なんやかんや多読を6000万語くらい積んだら、ほとんどどんな英語文献にも対処できるようになった。(努力ってすごい) ゆえに、英語文献が読めないという人は全員努力不足ということなので、そういう人たちには、とことん冷たい。(努力を怠ると、それが正直に結果に出る) 今は、Fate Grand Order にはまってしまっていて、FGO 関連の記事が多い。

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