1 僕は好きですよ。英語学習本。
僕は元々英語難民だったので、英語学習記や英語学習法を扱った本をよく読んだ覚えがあります。
僕が好きなのは大きく分けて2種類です。
A:奮闘記系
B:学術系
A の奮闘記系は、「英語が全然ダメだったサラリーマンが○○しまくって英語を何とかした」というタイプです。
僕が個人的に好きなものは、『海外経験ゼロ。それでもTOEIC900点―新TOEICテスト対応 』や、『NewVersion対応版 TOEICテスト300点から800点になる学習法』などがあります。
文字通り英語が全然ダメだった人たちがパワフルに英語を何とかする話です。
僕がこういう「パワフル系」を好むのは、僕も「パワフル系」に属するからでしょう。
僕自身、高校時代は英語が全然ダメでした。そこから多読をしまくって、言語学で最も難しいとも言われる Chomsky の著作を読めるようにしました。
こういうパワフル系のいい点は、「こうやって頑張っているのは自分だけではないのだな」と思わせてくれるところです。
ただし、奮闘記系は客観性に欠けているという難点があります。皆自分の経験に基づいて書きますが、それがどれだけの人に通用するのかは謎です。
そこで、そうした欠点を補うために、最近の僕は主に 「B 学術系」の物を読むようにしています。
2 学術系はマジで役に立つ。
「B 学術系」はゴリゴリの外国語習得論です。
僕自身が YouTube でも、このブログでもたびたび紹介している Schwieter, J. W. and Benati, A. (eds.) (2019) The Cambridge Handbook of Language Learning. Cambridge: Cambridge University Press. 等がまさにその典型例です。
こうした学術書では、「英語奮闘記系」に見られた主観的な記述ではなく、統計学、脳科学、そして言語学の知見を応用した客観的な分析が展開されます。
この客観性と厳密なデータ採取はある意味残酷で、「外国語は決して母語にはならない」や、「外国語習得には生まれ持っての才能が大きな役割を果たす」といった悲しいお知らせが反駁の余地のない形で提示されます。
また、「外国語学習に失敗する人の共通点」や「年齢と外国語習得の関連性」さらに、「英語の先生英語力がどれほど生徒の英語力に影響するのか」という、知っていて損はない情報が厳密なデータと共に提供されています。
学術的な本はこうした有益な情報の宝庫ですが、やはり英語で書かれたものが多いです。学問というものが英語で書かれる傾向にあるので、仕方がないことです。
しかし、学術系の和書も確かにあります。
今回ご紹介するのが青谷正妥先生の著作です。
青谷先生自身英語にはかなり苦戦しておられたようで、そこから TOEFL iBT 満点まで英語力を上げたすごい人です。
彼の著作はいくつかあるのですが、『英語学習論: ―スピーキングと総合力― 』が一番詳しいです。
巷にあふれる「怪しい」英語学習法に右往左往するより、まずこちらに当たってみることを僕は勧めます。
もちろん学問というのは常に更新され続けます(Windows のように)。
なので、この本に書かれている学術的なことの内いくらかはダメになっています。(さらに、言語学のサピア=ウォーフの仮説も生成文法的にはおかしいです。)
しかし、全般的に信頼を寄せて良い本だと言えるでしょう。