1 結構多い、けど見過ごされがち
どうも、言語学研究家です。
普段は少し専門的なことをしていますが、収益につながらないので、今日は専門的ではないことについて書きます。
僕は普段英語の本しか読みません(ネットに転がっている同人漫画を除く)。
なぜ英語の本しか読まないのかというと、別にえり好みをしているわけではありません。言語学の教科書も専門書も、重要なものはほぼ全て英語で書かれているからです。
よって、英語を読む力が本当に大切になってきます。
僕自身、英検1級を取った後に5000万語くらい多読して英語を読む力を身につけて、今その力が大いに役に立っています。
確かに僕の場合は自分で頑張った割合が極端に大きいです。とはいえ、入試というシステムの結果半ば強制的に英語を勉強したため、中学英語と高校英語の基礎的な文法事項を大学入学時点で既に身につけていたことも大きいのです。
本来これは当たり前のことなのですが、近年少子化によって入試というシステムそのものが崩壊してきており、中学、高校で習得しておくべきだった項目を習得せずにそのまま社会に押し出された人が増えてきている感がします。
そこで、大学生/社会人になったけれども、中学英語に不安がある人向けの記事を執筆する流れになりました。
本来こうした客層にはもっとスポットライトが当たってしかるべきなのですが、見過ごされている感じはありますね。
2 中学英語=大事な部分
世間的には、「中学英語=簡単」だと受け取られているようです。
しかし、僕はこの図式を「中学英語=大事/英語の根幹」に書き換えたいです。
中学で習う項目は、英語の根幹にかかわるところであり、簡単だと舐めてかかるようなところではありません。
僕の感覚では、洋書を読む際、中学レベルの文法知識で7~8割の文法事項はカバーできます。
それだけ使われる頻度が高いということです。
ここをしっかりやっておかないと、それより上の項目(高校レベル等)がしっかりと習得できないでしょう。
これほど大切な中学英文法なのですが、大の大人が電車の中で「中学英語基礎」などをやっていると、周りから「かっこ悪い」と思われていないか不安になるものです。
それはやっぱり「中学英語=簡単」という図式が世の中で受け入れられているからなんですね。
こればかりはもうどうしようもないです。
ただし、僕の信念として「勉強に関しては恥を捨てろ」というのがあります。
僕が多読を始めた時、既に英検1級を持っていたのですが、Oxford Bookworm Seriesのレベル1(初級)を大学の図書館にある分は全て読みました。
やっぱり1~6までレベルがある中で1番簡単なレベル1をやるのは最初は抵抗がありましたが、すぐに慣れ、図書館で堂々と読むようになりました。
すると実力がめきめき伸びたのです。
この経験から、僕は学習者である限り変なプライドは持たない方がいいと実感しました。
実年齢がどんなに高くとも必要とあらば初級からしっかりやる。これが本当の近道なのではないでしょうか。
ゆえに、中学英語に自信がない人は、僕みたいに恥を捨てて、電車の中で中学英語を勉強した方が潔くていいと思います。
3 中学英語を復習するには
やはり自分で本(教材)を買ってきて自分でやるのがベストです。
世の中には、『中学英語を○○日で復習する』系の教材を勧める人たちがいますが、僕はあまりこういうものを勧める気にはなりません。
もちろんどんな教材がマッチするかはその人次第なのですが、こうした『○○日で復習』系はどうしても説明が簡素過ぎるように思います。
中学英語がある程度分かっている人ならそれでいいのですが、知識が根本的に不足している人には、やはりしっかりとした説明がついている本(教材)の方がいいのではないかと僕は考えています。
そこで僕が勧めるのが『マーフィーのケンブリッジ英文法』です。
このシリーズは、レイモンド・マーフィーという人が書い英文法教材の翻訳版です。現在第4版まで日本語訳版が手に入るので、翻訳版を推薦します。
レイモンド・マーフィーという人は、元々イギリスの外国語学校で講師をしていた人です。
彼は多くの英語非母語話者に英語を教えるうちに、学習者が間違えやすいポイントが分かってきたのです。そういった文法事項をまとめて解説したものを教材にし、生徒が自由に使えるようにしていたのです。ある時、ケンブリッジ大学出版局の関係者がその原稿を見て、「これは素晴らしい、ぜひ出版しましょう」ということになって、この世界的なシリーズができました。
この『マーフィーのケンブリッジ英文法』は初級版と中上級版の2冊に分かれています。初級版は中学英語レベルで、中級版は高校の前半くらいのレベルです。
例文が非常に多く、実際の使用例をイメージできる解説が非常に有用です。
日本人が英語の参考文献を使用せずに書いた英文法書にはおかしな解説が結構あるのですが、この『マーフィーのケンブリッジ英文法』シリーズにはそういった個所が見当たりません。少なくとも僕が原書を確認した限りでは見つかりませんでした。
中学レベルが抜け落ちている人は、この初級版で、自分が弱いと思う個所を一度しっかりと解説を読みながらやってみても良いのではないでしょうか。
もちろん全ての項目を一様に学習する必要はないと思うのです。もしそんなことをすればへとへとになります。
『マーフィーのケンブリッジ英文法』以外に勧めるとすれば、教科書ガイドです。
僕が教科書ではなく教科書ガイドを勧める理由は、教科書だと挫折するからです。
確かに英語の教科書というものはそこそこよくできています。新出単語と英文法を用いた長文が載っていて、章末には練習問題までついています。
しかし一般的な教科書には、新出単語の解説も、新しい文法事項の解説も、出てくる長文の訳例もありません。よって、教科書単体では独習に不向きです。
そもそも教科書がこういう独習者に不親切なのは当然です。解説や答えが教科書に載っていれば生徒は授業を聞かなくてもよくなってしまうからです。よって、こうした解答や解説は「指導書」と呼ばれる教員だけが持っているバージョンについています。そして、こうした「指導書」が世の中に出回ることはまずありません。
では、学習者はどうすればよいのでしょうか。
世の中には『教科書ガイド』と呼ばれる便利な本があります。教科書ガイドとは、その名の通り市販の教科書に解説がついたものだと考えて構いません。教科書ガイドには、新出単語の解説も、新出の文法事項の解説も、出てくる長文の訳例も、さらに、章末の練習問題の解説と答えも載っています。
はっきり言って、独学/復習でこういった教科書ガイドを使わずに直接使う人は情報弱者かバ〇かよほどの自信家です。
何でみんなもっと教科書ガイドを使わないのかな?
色々な出版社が教科書を出していますが、僕からすればどれも一長一短です。なので、特にどこの会社の物を強く勧めるといったことはありません。
ただし、僕が英語教員としていろいろな検定教科書の見本を比べて分かったのが、同じ学年を対象とした教科書でも、出版社によって明らかに難易度の差があります。
例えば、勉強に力を入れている進学校向けの教科書というのが実際にあります。教科書を売りに来る出版社の営業担当も、自社製品である教科書に明確なターゲット層があればそれだけ売り込みもしやすいでしょう。自社製品が難易度が高めの教科書なら、そもそも偏差値の低い学校に売りに行かず、進学校ばかりに営業に行くという手もあります。
ただ、残念なのは、僕が明確にどれが難易度が高かったのかを覚えていないことです。しかし、検定教科書と言うだけあってどの会社の製品も、最低限の質は保たれていたことは記憶しています。
『マーフィーのケンブリッジ英文法』等の良質な英文法解説書と教科書ガイド以外で勧めたい本はそれほど多くはありません。
しかし、こうした参考書以外にぜひ多読と多聴を継続して欲しいものです。
これは私見ですが、大人になってからの外国語学習は基本的に多読と多聴で伸びていくと実感しています。
文法書や参考書をやるだけでは地の力をつけることは非常に難しいです。
中学英語のレベルで多読をするためには、ぜひレベル付きの多読シリーズをやってみてください。
例えば、ラダーシリーズのレベル1などが良いのではないでしょうか。
ラダーシリーズはタイトルも豊富で面白いものが多いです。
また、多読をしていくうちに、困難に出くわすと思います。その時必ずやってほしいのが、「なぜこの文章が読めないのか」や「どうしてこんなに読むのが難しく感じたのか」と考察してみてください。
学習の初期段階では、文法事項が足りていないので読めないというケースが多いでしょう。例えば、to 不定詞が分からないのであれば、かなりの割合の英文に歯が立たないはずです。
しかし、『マーフィーのケンブリッジ英文法』と教科書ガイド等の参考書できちんと中3レベルの英文法までやった学習者なら、文法事項よりもむしろ語彙力が足りなくて読めないケーズが多いことに気が付くはずです。
そうした学習者は、市販の英単語帳で語彙力を伸ばすのが賢明だと思います。
もちろん語彙力を伸ばす方法なんていくらでもありますし、人によって合う方法は違います。しかし、市販の英単語帳の中に良著が増えてきました。
例えば、中学レベルなら『必携 英単語 LEAP Basic』がおすすめです。この英単語帳は非常に優れており、基礎的な単語ならよく使う前置詞と共に載っています。さらに、後半は中学レベルにしては相当歯ごたえのある単語が載っています。このレベルが分かれば、基礎的な英語の文章にも太刀打ちできると思います。また、後半の難単語には、多くの場合覚え方として語源が載っており、丸暗記にならない点が素晴らしいですね。
この英単語帳は中学英語復習組に有益であるばかりか、今の中学生にも大変有用でしょう。
正直言って僕は今の中学生がうらやましいのです。僕が中学生だったころはこうした優れた単語帳なんて存在しませんでした。あったとすれば、一語一訳形式の、英語嫌いが悲鳴を上げるような「語彙集」でした。それにそもそもここまで「英語英語」と口うるさく言われてもいませんでした。
僕が子供のころは、今とは違って日本がまだまだ続いていくとみんな信じていたのですね。しかし、時代は変わりました。日本の将来は暗く、優秀な人たちは幼いころから英語をやって、海外に出稼ぎに行く時代に変わってしまいました。日本でやっている限り、他の先進国の水準からすれば考えられないくらいの低時給で命を削って働かざるを得ません。
まとめ
中学英語が分からないのなら、素直に認めて頑張った方が絶対にいいです。
外国語学習では、恥を捨てて真正面から取り組む覚悟が必要です。
良質な教材を使いつつ、多読を積んでみてください。