Samuel D. Epstein とは何者か?
Samuel D. Epstein は、名が知れた生成文法家です。
しかし、今の時点で、僕は彼の著作に、あまりなじみがありません。
Epstein を生成文法の世界で有名にしているのは、以下の2点でしょう。
① Chomsky の論文で何度も言及されていること。
② Strong Minimalist Thesis (SMT) 論者であること。
Chomsky の論文で、Epstein, Kitahara, Seely という3人組は何度も何度も言及されています。
もちろん、この3人が共著として書いた本や論文を指しているのですが、Epstein 単独での著作もたびたび言及されています。
ということは、Samuel D. Epstein という人の著作はかなり重要度の高い作品だと言えます。
それだけでなく、彼が Strong Minimalist Thesis (SMT) 論者だという事実が、Epstein の著作の重要度をさらに押し上げます。
Strong Minimalist Thesis というのは、Minimalist Program を厳密に推し進めていこうという考え方です。
Minimalist Program が何なのか、一言で説明するのは難しいです。よって、別の記事を準備します。
ともかく、Epstein は、そこら辺の「生半可な」生成文法家ではなく、かなり原理主義に近い生成文法家なのです。こういう風に書けば分かってもらえるでしょう。
因みに僕も Strong Minimalist Thesis 論者です。そして、そのことに誇りを持っています。なぜなら、SMT 論者は日本で4~5人くらいしかいないからです。
SMT 論者が書いているブログなんて、日本で多分これだけなんじゃないでしょうか。
博論が入手困難だった
僕は統語論 (Syntax) に関する博士論文を読むのが好きです。
博士論文は、分析に使用する理論をきちんと説明していることが多く、読みやすいからです。(そのためページ数が長大になってしまうのだが。)
普通の学術論文はそこまで丁寧ではありません。
なので、博士論文は、読んでいて、一種の安心感があります。置いてきぼりにされる心配がかなり少ないからです。なので、ダラダラと読み続けるにはもってこいです。
そういういきさつがあり、Epstein の博士論文をぜひ読みたいと思っていました。
Epstein が 1984 年に、University of Connecticut で博士論文を書いたことは知っていました。なので、コネチカット大学の博論が入手できるサイトで調べていたのですが、どうしてもデータが出てきませんでした。(下の URL からコネチカット大学の博士論文は大抵無料でダウンロードできます。)
https://linguistics.uconn.edu/output/dissertations/
上のサイトで調べると、確かに Epstein 1984 という記載はあるのですが、肝心のデータがありません。
Epstein はすごい人だという認識があったため、ぜひ彼の博論を読んでみたいと思ってました。しかし、どうやら不可能なようです。
なぜ彼の博論のデータが公開されていないのか分かりませんが、とにかく入手不能という事実は変わりません。
ただし、博論が書籍化された物は出版されています。優れた博論は、発表から数年後に書籍化されることがあります。Epetsin の博論も優れていたらしく、Oxford University Press から1992年に書籍化された物が出版されています。書誌情報(本の情報)は以下の通りです。
Epstein, S. D. (1992) Traces and Their Antecedents. Oxford: Oxford University Press.
これを読めば元の博論の内容は分かるはずです。しかし、元の博論を読んでみたいという気持ちはありました。
(ひょっとして、書籍版の売り上げを落とさないために博論のデータを伏せているのだろうか?)
遂に博論のURLが判明
最近は、人生に無意味感を感じ、余暇にネットサーフィンをすることがあります。
ネットサーフィンと言っても、主な目的は学術論文を探すことです。
University of Connecticut のデポジトリーを閲覧していると、なんと Epstein の博論があるではありませんか。
公式が出している Permanent Link は、以下の通りです。
http://hdl.handle.net/11134/20002:860670828
これをクリックするか、URL検索欄にコピー&ペーストすれば、Samuel D. Epstein の博論が載っているページにたどり着くはずです。
もしくは、以下のリンクからも飛べるはずです。
Connecticut Digital Archive | Connect. Preserve. Share (ctdigitalarchive.org)