生成文法の名著。【独学でもできる生成文法】

1,僕は言語学を独学でやりました。

僕はわけあって言語学を独学で勉強した者です。

「わけ」とは、簡単に言えばリストラでした。

まあ、詳細はここでは省くとして、入社2か月目くらいから既にここはやばいところだという自覚はあったので、いざリストラ騒ぎになっても、「やっぱりそうなっちゃうか」くらいの思いでした。

ただ、今後の自分の人生は自分で何とかする必要があります。

そこで、以前から文法をもっと詳しく勉強したい、英語をきちんと理屈で理解したいという想いがあったので、言語学を勉強することにしました。

目標は海外留学することでしたが、直接海外の大学を受験する方法が分かりませんでした。

まあ、googleで調べたら出てくるのでしょうが、その時は、なんか色々しんどかったので、煩雑な手続きなどは無理だったことでしょう。

もちろん、ほとんど全ての学問は独学で習得できます。実験設備が必要ない理論系学問(数学)や、文系の学問全般にその傾向が強いです。さらに、実験が必要な化学なども、Oxford 等から出ている専門書を読み漁れば、基礎的なことは習得可能なはずです。

なので、言語学を習得するために、どこか教育機関に入ることなど本当は不要なはずです。

大学院などの教育機関に入ると、学費という固定費が発生してしまうため、老後破産ルートに近づきます。

しかし、僕は海外留学という目標がありました。

英語をやっていると、やはり海外で学位を取ってきた奴らや、長期の留学経験がある人たちと、海外経験ゼロの自分の差が大きいことが分からされてしまいました。

だからこそ、長期の海外経験をしたかったし、何なら学位も海外大学院の物が欲しかったのです。

自分の能力的に、海外の大学院の学位は無理そうでした。しかし、日本の大学院から、交換留学で海外の大学院には行けるかもしれません。

よって、まず日本の大学院を目指すことにしました。

とは言っても、大学の学部時代に言語学を専門でやったことはありません。せいぜい一般教養科目でやった程度でした。

なので、大学院の入試に受かるれるまで言語学を自習でやる必要がありました。

まず、日本語で書かれた本を何冊か読んだのですが、専門用語が良く分からず、難しいと感じました。

そこで、洋書に直接あたってみることにしました。

すると、本当に分かりやすかったです。

日本語に訳す場合、専門用語には決まった訳語があるので、それを使わざるを得ません。mergeを併合と訳すと言った具合です。

しかし、これは結構分かりずらいものです。

英語の専門用語は、その単語からある程度意味が推測できる場合があるのですが、日本語訳はそういうことが少なかったですね。

split progectionとか、見ただけで、「CPが何回も続くあれね」と意味が分かりますが、果たしてこれの日本語訳がそうなのかは、分かりません。

そうして、洋書で言語学を勉強しているうちに、大学院の入試に受かるレベルになりました。

2,僕がであった名著たち。

まず、Andrew Radford の生成文法の教科書は、完全に他の追随を許さないレベルで完成度が高かったですね。

生成文法は、なかなか難易度が高く、専門書を直接読んで理解するのは、ほんの一握りの天才以外は不可能な領域です。

まあ、それもそのはずで、数学の教科書や参考書、ドリルなどを一切やらずに、誰の授業も受けずに、数学の専門書や論文を読んで理解できる人は、かなり少数派でしょう。生成文法も同じです。いきなり専門書をやるのは、初期の文献以外では不可能です。

1970年代以前の、初期の生成文法なら、いきなり専門書を読んでも理解できるかもしれませんが、1990年代以降はほぼ無理です。

2000年代以降に関しては、前の理論をある程度理解していない状態で専門書を読むと、ほぼ挫折します。

そこで、僕が紹介するような教科書の出番となるわけなんですよ。

Andrew Radford の著作の内、特に1988年の、Transformational Grammar — A First Course, Cambridge; Cambridge University Press. が優れていました。

このころの理論はまだ初心者でも理解しやすく、そこをRadford先生が分かりやすく教えてくれます。

専門書の知見を我々学習者にも分かるレベルにかみ砕いて解説してくれます。そして、それらの理論のどこが間違っていて、そういう課題を解決するさらに優れた理論を紹介してくれます。

何人もの言語学者が考えた理論を次々に紹介し、それらが持つ欠点も挙げていきます。その後、他の学者の論や、Radford先生自身の論を紹介するスタイルなのですが、これらの理論が、前の理論ではうまく説明できなかった点を次々に解消していくさまは、毎度毎度本当に読んでいて爽快です。僕はこれをRadford節と呼んでいます。

「今回もRadsford節が炸裂したで」とよく心の中で言っていました。

説Aだと、生成文法の絶対のルールであるパラメーター理論と論理的に矛盾する。説Bだと、何の説明にもなっておらず、その現象ごとの特別ルールを作っているだけで、全ての言語現象に当てはまる普遍的なルールになっていない。しかし、近年の説Cだと、パラメータ理論にも整合し、全ての言語現象にも当てはまる説明ができる。といった具合です。

本当はもっと爽快なのですが、こればかりは実際の本で体感してください。

また、2016年の、Analyzing English Sentences second edition, Cambridge; Cambridge University Press. もすごかったです。

これはもはや、生成文法の教科書の一種の完成形ですね。

ほとんどの理論が、理論間で整合性を持っています。それを分かりやすく説明してくれています。

Bibliography Backgroundの個所を見ると、これだけの本を書くのにいどれほどの下準備が必要だったのかが分かります。

はっきり言って凄まじいです。

これの短縮版が2020年のAn Introduction to English Sentence Structure, Cambridge; Cambridge University Press. です。2016年の物と実質的には変わらないのですが、より短く、分かりやすくなった、本当の意味での入門書です。

言語学を専門としない人には事らの方がいいのかもしれません。

作成者: hiroaki

高校3年の時、模試で英語の成績が全国平均を下回っていた。そのせいか、英語の先生に「寺岡君、英語頑張っている感じなのに(笑)」と言われたこともある。 しかし、なんやかんや多読を6000万語くらい積んだら、ほとんどどんな英語文献にも対処できるようになった。(努力ってすごい) ゆえに、英語文献が読めないという人は全員努力不足ということなので、そういう人たちには、とことん冷たい。(努力を怠ると、それが正直に結果に出る) 今は、Fate Grand Order にはまってしまっていて、FGO 関連の記事が多い。